今回は小学生(中高学年)向けの授業例を紹介します。
〇優先座席は必要か?
授業者:優先座席のマークを見せる。「これ何だか知ってますか。」
児童「知ってます」「優先座席のマークです」
授業者「これって何のためにあるの?」
児童「お年寄りや体が不自由な人、妊婦さん、松葉づえを使っている人など、立っているのがつらい人が席に座れるようにするためです。」(こんなにきちんと発言できないとは思いますが、予想される発言を一つにするとこんな内容になると思います)
授業者「なるほど。でも、これって必要なの? いらないんじゃないの?」児童「困っている人のためのものだから必要だと思います。」
何人かに意見を聞いた後、最初に優先座席を導入した阪急電車の新聞記事を配布し「必要」論を後押しする。それを簡単に説明した後、阪急電車が一時優先座席を廃止したことを知らせる。
授業者「どうしてやめちゃったと思う?」
児童「元気な人が座って、譲らなかったから」何人か意見を聞く。阪急電車に「譲らない人」が多いというクレームがあったことも参考として伝える。
その後、再開されたことを知らせ、優先座席の有無にかかわらず困っている人に気付いたらどの席に座っていても譲るのが本当のやさしさであることに気付かせる。
小学生を対象にした授業では、中学生ほど極端なオープンエンドやモラルジレンマ的に授業を展開するのは困難だと思います。そうした終わり方は時として児童を混乱させることがあります。そのため、ある程度「なるほど」と納得できる着地点を設定しておいた方がいいと思います。しかし、「どうして?」という質問によって、その都度子どもたちの心を揺さぶることは必要です。揺さぶるたびに思考は深化していきます。そのためには、抽象化された言葉ではなく、実際に起こった事実を使うのが効果的です。事実は児童にとって「絶対的」なものであるだけに、「えっ」「そんなはずはない」と思わせるのに有効なのです。
いずれにしても、子どもにとって何の「事件」も起こらない授業は必ず上滑りします。事件とは「えっ」と思わせることです。
(作品No.124RB)