私は教諭の頃、毎年学級通信を出していました。多いときは、年間260号くらいになったこともあります(多いから良いというわけではないですが)。一般的に学級通信は、学級の様子や担任の考えを保護者や子どもに主な目的だと言われますが、それ以外にも多くの効用があります。
第一の効用は、生徒を細かく見る習慣が自然に身につくことだと思います。学級通信は、生徒の日常から「ネタ」を探すのが一番です。通信は後々まで残ります。悪いことは書けませんから、自ずと生徒の良いところを探すようになります。その姿勢が生徒に伝わり、互いの良好な信頼関係の基盤となります。ただ、中学生の場合、どんなに素晴らしい行動であっても、名前を出されるのを嫌う傾向があるので、私は良いこともあえて名前を伏せました。それでも、本人は自分のことだとわかります。「先生は、こんなところも見てくれているんだ」という安心感が生まれます(小学生、特に低学年では逆に名前を出した方が本人も保護者も喜んでくれるのかもしれません)。
他に、自分の実践記録になるという効用もあります。過去の通信を見れば、かつて自分が同じような場面で何を考えていたのかを振り返ることができます。そこから新しいアイデアが生まれる経験を何度もしました。今はパソコンで作ることができるようになりましたから、データとして残すことも簡単です。「手書き」にこだわっている人も写真に撮って、後に残る電子データとして保存しておくことをお勧めします。
また、懇談など保護者と話す際に、「いつも通信楽しみにしています」と言われることもよくありました。保護者との会話が感謝の言葉で始められると、懇談が和やかな雰囲気で進められますし、学級経営にも絶大な効果を生み出します。クラスを大事にしているという姿勢を伝えるには最適な方法だと思います。
私は、通信を書くのに30分以上時間をかけないと決めていました。書ききれなかったら次の日に出せばいいのです。大切なのは、無理をしないこと、自分が楽しむことです。学級通信は義務ではありません。別に出さなくてもいいわけです。あくまでもプラスアルファだからこそ、書く方も読むほうも楽しめるのです。忙しいなかで学級通信を出すのは大変ですが、見方を変えればこんなにローコストでハイリターンなツールは他にないと思います。
私は、自分が出張で終日学校にいないときに、副担任先生にお願いして終会で配布してもらったりしていました。生徒は「こんな日にも出るんだ」とびっくりするようで、次の日学校で「先生すごいなあ」と言われました。まあ、若干姑息な手段ですが……。
<補足>使用するイラストや写真などの著作権については十分な注意が必要です。インターネットで「フリー素材」とされていても転用には許可が必要な場合があります。改正著作権法35条(令和2年4月施行)では「学校その他の教育機関」における授業での使用が緩和されました1)が、学級通信は授業外なので緩和の対象にはなりません。フリー素材であっても条件によっては数十万の損害倍書請求をされることがあります。もし、これが人気アニメのキャラクターならもっと大きな額になるかもしれません。インターネットからの「コピペ」は、そのサイトの使用規定を必ず確認することが大切です。少しでも不安がある場合事前にそのサイトの「お問い合せ」窓口などから確認をとるくらいの慎重さが必要です。
1)ただし、同法35条2には「公衆送信を行う場合には,同項の教育機関を設置する者は,相当な額の補償金を著作権者に支払わなければならない.」とあります。(作品No.225)